【今日の歴史】1913年8月16日の事【海軍最後の外国製戦艦】

【今日の歴史】1913年8月16日の事【海軍最後の外国製戦艦】

日本海軍の巡洋戦艦「金剛」が竣工

公試運転中の「金剛」
公試運転中の「金剛」出典:Wikimedia Commons

金剛(こんごう)
日本海軍最後の外国製戦艦。
日本海軍が初の超弩級巡洋戦艦
として発注した金剛型の1番艦。
イギリスに発注された最後の軍艦である。
2度の改装を経て高速戦艦に変身し、
太平洋戦争でも活躍した。
本艦は、日本海軍が太平洋戦争で使用した
唯一の外国製日本戦艦である。

艦名の由来
戦艦では旧国名が付くことが多い
が、一等巡洋艦として設計されたため山岳名が付けられている。
艦名は、奈良県と大阪府の境にある金剛山にちなんで命名された。
艦内神社は建水分神社。

概要
英国1906年に画期的戦艦「ドレッドノート」を完成させて以来あまりに戦艦の進歩は飛躍的になり、設計はまとまらなかった。

1908年には弩級巡洋戦艦インヴィンシブル級3隻が竣工1909年には超弩級戦艦(ドレッドノートを超える戦艦という意味)オライオン級が起工されるとともに当時世界最大艦となる超弩級巡洋戦艦ライオン級が計画されるという事態に鑑み、1911年(明治42年)「金剛」を超弩級巡洋戦艦として建造すべく計画を変更した。

この当時日本海軍は1907年(明治40年)計画の国産弩級戦艦河内型を建造中であったが、構想や技術的に欧米に劣る点も多く認められたため、「金剛」は技術導入を兼ねて英国に設計・建造を依頼した。

建造アームストロング・ホイットワースヴィッカースが名乗りを上げたが、設計試案と技術力を検討しライオン級巡洋戦艦プリンセス・ロイヤルを建造した実績からヴィッカースに決定した

英国が図った便宜
軍艦を建造する造船所
はそれぞれ他社にはない独自の技術を持っており、一般に企業秘密として公開しない。

しかしヴィッカースは戦艦「三笠」「香取」を建造した実績があり、日露戦争日本海海戦における戦艦「三笠」の活躍を誇りとしており、日本海軍と親密な関係が保たれていた。

発注に際し日英両国の間で次の約束がされた。

日本海軍の造船、造機、造兵各技術者を派遣、長期に渡り金剛の工事の一切を監督、調査する。

砲塔その他一切の船体、機関などの図面を日本は入手し、引き続き利用して同型艦を日本国内で建造する。

ヴィッカースは快く派遣要員を受け入れ、技術指導を実施した。


日本より建造立ち会い監督官、船体、機関、武器各部門の技術士官、2番艦「比叡」を建造する横須賀工廠の工員が多数派遣され、また3番艦「榛名」や4番艦「霧島」を建造する神戸川崎造船所と三菱重工業長崎造船所から技術者や工員が建造技術取得と調査のために渡英した。


「金剛」の設計図契約に基づき日本に引き渡され、同型艦3隻は本艦の図面を元に国内で建造された。

特に日本が立ち後れていた艦内電気艤装工事の技術は大きな収穫となり、日本の造船技術を一躍世界超一流に引き上げる結果となった。

日本海軍ではこれを「技術輸入」と称していたという。

後に戦艦大和の46cm主砲を製造した秦千代吉もこの時派遣された者の一人である

改装
第一次改装までに小改装が繰り返された。

前部三脚マスト頂部の射撃観測所に方位盤照準装置を設置した。
時期は1916年末。

90cm探照灯を110cm探照灯に換装した。
時期は7、8番が1914年10月から翌春、1、2番が1915年7月という。

逆風時に排煙が艦橋に流入するのを防ぐため第一煙突を高く改正、煙突頂部に防煙盾を設置した。

射撃命中率向上のため前部マストヤード前面に測的所を設置した。

8cm単装高射砲を4基搭載した。

前部マスト基部張り出しと第一煙突横後方の両舷探照灯を廃止、第一煙突と第二煙突の間に探照灯台を設置し、探照灯を移設した。

主砲塔上の単装砲を廃止
時期は1916年末。

第二煙突の頂部に煙路雨水浸入防止キャップを取り付け。
砲塔と艦橋前面に測距儀を設置

前部三脚マストを廃止し、射撃指揮所を含めた櫓式艦橋とした。
主砲仰角を25度から33度に引き上げ、これにより最大射程を25,000mから28,500mに延伸した。

後部三脚マスト上の射撃観測所を撤去した。
8cm単装高射砲を4基増設した。
第三砲塔後部の上部構造上に水上偵察機を搭載し、これに伴い機を吊り上げるデリックポストと起倒式ブームを右舷に設置した。

第一次改装
1928年(昭和3年)10月より1929年(昭和6年)9月15日まで
横須賀工廠で、主として水平・水中防御力の強化と重油への燃料移行が行なわれた。

1929年(昭和6年)6月1日付け戦艦に艦種変更された。
水平防御の強化。
弾火薬庫上部甲板厚さ4インチのNVNC装甲板を、機関区画は缶室や機械室上の下甲板に厚さ3インチのHT強度材を追加した。

砲塔支筒円筒部装甲板と砲塔天蓋装甲板3インチ増厚し、6インチとした。
煙路、通風路、揚弾筒の防御甲板を貫通する部分4インチから7インチの範囲で増厚した。

対魚雷と至近炸裂弾による水中弾片防御としてバイタルパート部の側外板に厚さ1インチのHT材を3-4枚張り重ねた。

主缶室外側の燃料庫内厚さ2インチのHT材縦隔壁を新設した。

水中防御のため喫水線長の4/5に渡り総容量3,000トンのバルジを取り付け。

前後部水防区画、中央部は燃料タンクとして用いた。
艦の幅が広くなり水中抵抗と排水量が増加したため速力は低下したが、復元性能上有効であった。

ヤーロー式缶36基を取り外し日本海軍がヤーロー式を改良したロ号艦本缶を重油・石炭混焼缶が6基、重油専焼缶が4基の計10基搭載した。

煙突を一本減らし2本煙突となった。

重油使用の増加により従来あった石炭庫の一部は油密され給油配管艤装され重油タンクとなり、このため重油搭載総量は5,000tとなり、航続距離が14ノットで2,000海里延伸された。

また煙の色が薄くなるため遠方から発見される確率が低くなった。

艦橋構造を変更し檣楼頂部に射撃指揮所を設置した。

三番主砲塔の後方水上偵察機3機搭載設備を設置した。

水中魚雷発射装置4基を撤去した。

その他艦内全般に渡り諸艤装の改正が施された。

第一次改装~第二次改装までの小改装
8cm単装高角砲7基を撤去し、12.7cm連装高角砲4基を装備した。

40mm連装機銃2基を装備した。

カタパルトを装備した。

副砲の1番、2番15cm単装砲を撤去し、砲廓開口部を閉鎖した。

改装後の「金剛」
一次改装後の「金剛」出典:Wikimedia Commons

第二次改装
1935年(昭和10年)6月より1937年(昭和12年)1月まで横須賀工廠で、主として機械の換装による速力増加と兵装強化が行なわれた。

機関出力は136,000馬力に上昇し、速力30.3ノット。

燃料搭載量は6,480t、18ノットでの航続距離は9,800海里となり、近代的な高速戦艦となった。

従来装備していた主缶を取り外し、ロ号艦本式大型重油専焼缶8基とした。

主機械を艦本式ギヤードタービン4基に換装した。

缶配置を変更し缶室区画を廃止、燃料タンクとした。

船体抵抗に関して有利にするため艦尾を7.4m伸長した。

凌波性を向上するため船首材を鋭利な形状に変更。

艦橋構造と関連諸室を大幅に改造。

檣楼頂部に10m測距儀を設置、射撃指揮装置を新形式の機器に換装した。

これらの機器の振動防止のため艦橋構造檣楼の背後に太い補強支柱を設置した。

後部艦橋構造を大型化し、第二煙突からの煙と熱を避けるため傾斜をつけた。

主砲仰角を33度から45度に引き上げ、これにより最大射程を28,500mから33,000mに延伸した。

副砲仰角を30度とし最大射程を延伸、砲台座と砲廓を改正した。

水中発射管を全廃、倉庫または燃料タンクとした。

40mm機銃を撤去し25mm連装機銃を10基搭載した。

その他艦内諸艤装の改正を実施し、居住性が向上した。

第二次改装~第二次世界大戦までの小改装
バルジ内に鋼管を配置した。

磁気機雷防止のため舷外電路を取り付けた。

注排水装置を新設した。

防毒装置を新設した。

主砲塔の装甲板を増厚した。

近代化改装後の「金剛」
近代化改装後の「金剛」出典:Wikimedia Commons(CC)作者:Alexpl

マレー沖海戦
「金剛」は、太平洋戦争開戦時は同型艦「榛名」とともに第三戦隊第2小隊を編成し、南方攻略部隊の支援任務に就いた。

シンガポールに進出していた英海軍東洋艦隊旗艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と対峙する事となったが、新鋭戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」よりも全ての点で大幅に性能の劣る巡洋戦艦金剛型2隻による砲戦は企図されず、航空隊と水雷戦隊によって英艦隊を迎え撃つ事が計画された。

作戦行動中の戦艦が航空機によって沈められる事は無いと考え、1機の護衛戦闘機もつけず、日本側の航空機を過小評価していた英国側は、この海戦の結果「日本海軍航空隊」によって「プリンス・オブ・ウェールズ」を失う事となった。

しかし、金剛型による交戦は企図されていなかったものの、実際には「金剛」、「榛名」の両艦は「プリンス・オブ・ウェールズ」と砲戦が可能な距離にまで一時接近していた事が作戦後に判明した。

幸いにも「プリンス・オブ・ウェールズ」より砲撃を受ける事は無かったため、「金剛」は命拾いをした形となった。

その後、第三戦隊は金剛型4隻そろって南雲機動部隊(空母赤城、蒼龍、飛龍、瑞鶴、翔鶴)の随伴艦となり、インド洋に進出した。

この時の第三戦隊隊番号は、旗艦/第1小隊「比叡」、2番艦「霧島」、第2小隊/3番艦「榛名」、4番艦「金剛」であった。

3月6日、第二航空戦隊(司令官山口多聞少将:蒼龍、飛龍)、第三戦隊第2小隊(榛名、金剛)、第一水雷戦隊第17駆逐隊(谷風、浦風、浜風、磯風)は機動部隊本隊から分離、クリスマス島へ向かった。

空母2隻の護衛に「浜風」「磯風」を残すと、「榛名」「金剛」「谷風」「浦風」はクリスマス島に対し艦砲射撃を実施した。

サマール沖海戦後の「金剛」はフィリピンやブルネイを転々したのち、日本本土への帰還が決定。

戦艦「大和」、「長門」、軽巡洋艦「矢矧」、駆逐艦「浦風」、「磯風」、「雪風」、「浜風」、「梅」、「桐」が「金剛」と行動をともにした。

11月16日、艦隊は「榛名」「羽黒」「足柄」「大淀」をブルネイに残置して外洋へ出た。

11月20日、「梅」「桐」が艦隊から分離して台湾の馬公へ向かった。
これにより、護衛駆逐艦は第十七駆逐隊の四隻だけとなった。

「磯風」乗組員によれば、「金剛」に燃料補給を依頼すると『やる油はないから、後からついてこい』との返事があったという。

20日20時、「大和」から陣形変更の信号があり「大和」→「金剛」→「長門」から「金剛」→「長門」→「大和」に序列が変わったという。

ただしブルネイ出港時から「金剛」「長門」「大和」だったという証言もある。

沈没
11月21日零時、先頭「金剛」、二番「長門」、三番「大和」の順で航行する日本艦隊は正体不明の電波を探知、之字運動をやめ速度をあげて現場海域を突き切ろうとした。

艦隊の先頭を「矢矧」が、戦艦戦隊の右舷(左舷)を「浦風」「雪風」(浜風、磯風)が航行していたが、台風に突入したためレイテ沖海戦で損傷していた「矢矧」は落伍、駆逐艦隊も危険な状態となっていた。

午前3時ごろ、「金剛」は台湾沖・基隆北方50浬で米海軍潜水艦「シーライオン」の魚雷攻撃を受けた。「シーライオン」は6本の魚雷を発射。

午前3時6分、12ノットで航行していた「金剛」の左舷艦首と2番煙突下の缶室に合計2本の魚雷が命中した。

この時、戦艦「長門」を狙って外れた魚雷1本が護衛の第十七駆逐隊司令艦「浦風」に命中して「浦風」は轟沈、第十七駆逐隊司令部、艦長以下乗組員全員が戦死している。

3隻となった第十七駆逐隊は、「雪風」が戦艦「大和」や「長門」の護衛として現場海域を離脱。

「金剛」は『六・八罐室浸水、十六節、傾斜十四度』等を報告し、「磯風」「浜風」と共に基隆へ退避することになった 当時「金剛」すでに艦齢30数年と老朽化が進んでおり、レイテ沖海戦でも至近弾で浸水被害を受けていた。

魚雷命中破孔に加えてリベットの継ぎ目などからも浸水、徐々に破損箇所が広がって傾斜が増大する。

傾斜12度になり、艦長は左舷副砲指揮官兼衛兵司令の佐藤中尉を呼び、艦長公室の御真影を艦橋に移させた。

午前5時の時点でも11ノットで航行しており、乗組員の誰もが魚雷2本で沈むとは考えず楽観視していたため、駆逐艦を接舷させての乗員退避は実施されなかった。

応急決死隊が潜水具をつけて作業にあたるも手遅れであり、傾斜18度で司令官及び艦長より総員退去命令が出される。

5時20分には機関が停止、10分後の午前5時30分に転覆した。

沈没直前、弾薬庫の大爆発が起きて艦中央付近にいた多くの乗員が吹き飛ばされ犠牲となった。

被雷してから沈没まで2時間があったにもかかわらず、損害の軽視、総員退艦の判断の遅れなどにより、島崎利雄艦長、鈴木義尾第三戦隊司令官以下1,300名とともに沈むこととなった。

竣工
1913年8月16日
就役
1913年8月16日
除籍
1945年1月20日
最後
1944年11月21日沈没

豆知識
回航
は日本海軍の乗員により行なわれ、大艦であったためスエズ運河を通れず喜望峰回りで11月5日横須賀に到着した。

進水式外国では艦首に吊るしたシャンパンボトルを割るのが通例であったが、日本側の要望で日本式に鳩の入った薬玉を用いたところ、英国人が珍しがって喜んだという。

「金剛」の装甲鋼鈑には、ヴィッカースの特殊鋼板VC鋼板が使用されていた。
後に日本で建造された同型3艦にもこの技術は導入され、国産化された。

なお後年の改装の際

ドリルで装甲鈑に穴を開けようとすると、国産3艦はやすやすと通ったにもかかわらず、金剛だけはドリルが折れてしまうということがあった。

という話が紹介されることがあるが、当該装甲の部位、厚み、材質などにはまったく言及されておらず、風説の域を出ない。

「金剛」は日本戦艦で唯一潜水艦の雷撃により撃沈された艦である。

一部連合国側戦史では、日本海軍戦艦の最高殊勲艦とされている。

抜粋:http://ul.lc/4v94(Wikipedia)より

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