【もうすぐAppleの傘下】してやったりのBeatsの闇=その3

【もうすぐAppleの傘下】してやったりのBeatsの闇=その3

【もうすぐAppleの傘下】してやったりのBeatsの闇=その2からの続きです。

appleとbeatsは?
appleとbeatsは?

蜜月は蜜月でも、3人の関係はスティーブ&ウォズのように同じギークの血をもつ仲間同士のタッグではありませんでした。最初から目的はビジネス、銭、金だったのです。今だからNoelにもそれがわかりますが(Jimmyは全部独り占めしたかったのさ、とギズには話してます)、モンスターはうぶでした。必要な局面でそれが見破れなかったのです。

モンスターにはヘッドフォン事業をバーンと立ち上げたいという欲がありました。強い欲が。時は2000年代半ばの不況で、DreもJimmyもレコード以外の収入源がなんとしてでも必要でした。ところがなんとお金の部分は、スティーブ・ジョブズの薫陶を受け音楽業界を牛耳るJimmy Iovineに全部いいように決められてしまったんです。どこの馬の骨とも知れない高級ケーブルメーカーが太刀打ちできる相手ではありませんでした。 モンスターは、Dreが抱える「エンタメとスポーツ」の人脈を駆使して契約をとれば一躍メインストリームになれる、と考えていました。実際その通りだったのですが、それで儲けの分け前に預かれるほど世の中、甘くはなかった…。

モンスターは莫大な儲けを手にするチャンスに恵まれながら、それをことごとく棒に振ってしまったのでした。

商談の条件取りまとめに向かったKevin Leeには、4年制の大学を出た学位と、あとは父の会社で働いた経験があるぐらいで、他にビジネスの経験はありませんでした。単身LA入りした若旦那Kevin Leeを待ち受けていたのは、法務・財務・総務のプロが結集した一枚岩…Kevinはみるみる戦意喪失です。双方契約書にサインする段階になった途端、彼らはディスりモードになり、モンスターにいくらいい音声技術があっても、そんなもん他にもってる会社はいくらでもある、インタースコープにはサインする義理はない、の大合唱を始めたのです。「Jimmy Iovineとインタースコープのマーケティング部門プレジデントSteve Burmanは具体的な一連の数字をのむよう迫ってきたのだが、それは5000万ドル(51億円)の損益を出したばかりの零細のワイヤー会社が払えるような額ではとてもなかった」とKevin Leeは言います。

利益分配として提示された条件が賄えないモンスター。足元を見透かしたかのように値切る音楽業界のタイタンふたり。交渉は暗礁に乗り上げ、シーンと水を打ったような静けさに…。やがてJimmyはツカツカと歩いて、Dre(とエンタメ業界)の手をとって部屋を出ていってしまいました。去り際に「こんなことしたくないけど、他と組むよ」と言い残して。

後にはモンスターがひとりポツンと残されました。

やがて半年後。(交渉でうじゃうじゃ言ってた)Steve Burmanから電話がかかってきました。チームDreは、スピーカー部門でもっと実績のある「SLS Audio」と組もうとしたんだが、うまくいかなかった、「モンスターにまだその気があるならまた組みたい」というんですね。もちろんですとも! と先のことも忘れて尻尾を振るモンスター。

しかし、この半年の間にいろいろ状況は変わってました。「Beats by Dre」という商標は既にモンスターと先のタッグで決まってたんですが、SLSもラフな試作品を作っていたんですね。巨大なイヤーカップ、分厚い直線的なヘッドバンド、フォーミュラ1みたいなグロッシーな仕上がり―今のBeatsの原型のようなものができていたのですが、それじゃ大き過ぎるとKevin Leeは言いました。Dr. Dreの大きな頭でも大き過ぎる。「頭につけて鏡を見てごらんよ。変でしょ」

さっそく試作機づくりに逆戻りです。モンスターは「試作品を40~50個製作」し、リスクを自分で背負い込んでしまいます。父親は「そんなに是が非でも提携を進めたい雰囲気じゃなかった」ので、Kevinはこっそり隠れてモンスターの会社のお金を誰かの承諾も得ずに何百万ドル(何億円)も見切り発車で注ぎ込んでしまったのですね。「(CES 2008の)記者会見で発表した時には、契約成立もまだなのに技術と宣伝に150万ドル(約1億5000万円)もの金を投じた後だった」(Kevin)

その4へ続く

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